Hearts of Iron IV 開発者日記 第230回目を紹介。
今回は戦車の構成を設定する戦車(タンク)デザイナーについてです。
[記事内の画像はパラドフォーラムより引用]
Hearts of Iron IV 開発者日記 2021年4月28日分(第230回)
※コンテンツデザイナーとコンテンツデザインの違いがわかりませんが、役職名は「コンテンツデザイン」となっているので表記はそちらに合わせました。
冒頭の挨拶
1.11″Barbarossa”パッチとそれに付随するDLCにて提供されるコンテンツに関する開発者日記へようこそ。
今回の開発者日記で紹介している内容はまだ開発中のものなので、リリース前に数値やUIが変わる可能性があることをご了承ください。
戦車デザイナー
Man the Guns DLCでシップデザイナーを公開して以来、「戦車にも同じようなシステムが欲しい」という声が寄せられていました。
私達はそれは可能でした。しかしまたシップデザイナーを少し改良したいとも考えていました。
中でもシップデザイナーは、一般的なデザインを推奨しすぎていると感じていました。
問題の1つとして船が利用可能になるまでのリードタイムが非常に長く、タイミングよく設計を繰り返していくことが難しい場面があります。
船の製造に2年かかる場合、2年後の状況を正確に予測することはできませんからあまりにも専門化させることはできません。
幸いなことに戦車に必要な投資はわずかです(そうは言っても我々のQA担当はコスト面でシップデザイナーに匹敵するデザインを作ろうとしていますが)。
そのため、新しい戦車の設計は新しい船のものよりもはるかに早く現場に登場し、新しい状況へとはるかに迅速に対応できます。
もう1つの問題は、魚雷発射装置によって占有される空間(またはモジュールスロット)が対空砲によっても占有されるため、船をどちらかのタイプの敵に対してより良くするという意味において、船は通常、異なる能力間でのトレードオフが存在していた事です。
しかし、対空砲を搭載していなかったり水上ターゲットに対する防御手段を持たない船を欲しがるということはほとんどなく、常に対空砲と船体攻撃の両方を備えていました。
一方で戦車には通常、同じようなトレードオフはありません。
通常、戦車を設計する際には、地上のターゲットに対して別の対空砲または2つ目の主砲を搭載する必要があるかどうかを考えます(もちろん、ドイツで1944年時の場合は除きます)。
しかし戦車にはまだ設計上のトレードオフがあり、私たちはそれを表現したかったのです。
従来、戦車の設計は、移動性、火力、および防御力の3つの側面を中心に行われていました。
装甲に優れた戦車は動きが遅く、速い戦車は大きな砲を運ぶことができず、大きな砲銃は装甲面が難しい大きな戦車を必要とします。
戦争の間、異なる国で異なるアプローチが試みられ、彼らの観察から異なる教訓を学びました。
つまり戦争の終盤でドイツの戦車が重い砲を運ぶ重装甲車両であったことは驚くべきことではありませんが、戦後の最初の設計では比較的装甲が軽いが、十分に武装し非常に機敏なLeopard 1でした。
ですので私達はこの3つの側面について考えてもらい、その間でトレードオフの関係になるようなものにしたかったのです。
しかしグランドストラテジーゲームでは、一般的な戦車のデザイン比較以上に、他の側面も重要になります。
世界最高の戦車でも、戦場に向かう途中で故障してしまっては意味がありませんし(パンサーファンの方はご注意ください)、それを購入できなければさらに意味がありません。
だからこそ、戦車や装甲車を設計する際には、コストや信頼性も重要視したかったのです。
船とは対照的に、私たちは特定のニッチさを満たすためにデザインを専門化し、特定の役割に向けて最適化することについて、皆さんにもっと考えてもらいたかったのです。
主力製品である中戦車(「シャーマン」と呼ばれることもあります)には、ある程度標準的なデザインが求められるでしょうが、より特化したデザインも必要です。
このアプローチの一環として、信頼性と装甲のシステムに変更を加える予定です。
詳細は今後の開発者日記で(他の戦闘の変更と合わせて)紹介しますが、大まかには、信頼性は消耗率だけに影響するものではなく、装甲システムは二元的ではなくなるということです。
この変更の一環として、機械化された装備にもアップグレードを与え、戦車に追いつけるようにすることにしました。
新しいシステムでは、信頼性はある機器が故障する可能性と衝突したときに壊滅的なダメージを受ける可能性とそれを修理するために必要な労力の両方を表しています。事実上、信頼性はシャーシの積載能力も表しているため、シャーシごとに信頼性の予算が設定されていることになります。
装甲が増え、武器が大きくなるほど信頼性は下がっていきます。
より重くより進化した戦車のシャーシは、一般的に信頼性が高くなります(ベースシャーシで信頼性が100%を超える場合もあります)。
基本的なことについては十分に理解した上で、本当に知りたいことについて話しましょう。
ゲーム的にKampfwagenkanone Zweiundvierzigはどうなるのか?
Elefantの奇妙なハイブリッド電気ドライブは表現されていますか?
前方装甲の正確な角度は設定するのですか、それとも厚さだけを設定するのですか?
シャーシ・装甲
船と同じように、戦車も船体(シャーシと呼ばれる)と、最終設計の実際の状態を定義する多数のモジュールに基づいています。
これらのモジュールは、シップデザイナーの挙動とは少し異なります。
主要な武装に関してはかなり明確ですが、他の「モジュール」は「デザイン上の特徴」のようなものを表しています。
これらの特徴は、戦争中の装甲開発について深く理解していない人であっても少なくとも異なる装甲タイプが異なるものに適しているということを理解できるように、十分に明確なものになるよう意図されています。
厚さの異なる装甲タイプに関する膨大なリストをスクリプトで記述する代わりに、装甲は厚さと製造方法で表現されます。分割のある装甲は最も安価ですが、最も弱いものです。鋳造(キャスト、一体型)装甲は最も強いですが最も高価でもあります。
溶接装甲は両極端の間の妥協点であり、最も費用対効果が高いものです(溶接には特殊な設備と訓練が必要なので、鋳造装甲と溶接装甲の間にはどちらかにするかの選択があるでしょう)。
装甲の厚さは、従来のバニラ版向けアップグレードシステムによく似た内容によって変更され、最大20段階まで異なります。
まず、戦車に最大5段階の装甲(およそ50mmの装甲に相当)を装着することができますが、研究によってさらに装着することが可能になりました。
装甲保護のレベルが高いほど、鉄や最終的にはクロムなどの多くの資源が必要になります。
シャシー自体に装着できる装甲量に制限はありません。
タイガーの装甲を身につけた軽戦車(Panzer I Ausf. Fと呼ばれています)を作ろうと思えば可能です。
車両の装甲アップグレードの量は、選択した装甲のタイプに基づき実際の装甲値に換算されます。
そのため5レベルのリベット式装甲は、5レベルの鋳造式装甲よりもまだ弱いですがはるかに安価です。
エンジン
またエンジンタイプも理解しやすいように設計されています。
ガソリンエンジンは同じ重量でディーゼルよりも速いですが、ディーゼルの方が信頼性が高いです。
その上、電気ハイブリッドエンジンが状況に応じた選択となります。
私たちは当初、彼らをジョークのネタにしようと考えていました。つまりコストがかかり、信頼性が低く、燃料効率が悪いからです。
しかし、さらに読み解くと彼らの背後にある理論的根拠は、彼らが破壊された地形でより良い移動性を提供したということでした
ゲーム中では、これはブレークスルーと防御への小さなボーナスで表現されます。
最後にジェットエンジンの研究から解放されたガスタービンがあります。
これは最も速いエンジンオプションですが、多くの燃料を消費します。
アーマー同様、エンジンにもエンジン出力のレベル(最大20)を設定できるアップグレードシステムがあります。
ほとんどの歴史的設計において、速度はそれらが基づいている車両の規定された最高速度よりも低くなることに注意すべきでしょう。
これは、車両の動作速度、つまり24時間で車両がどこまで到達できるかを表しているためです。
戦車というのは最高速度で1日中走り回らず、燃料補給、乗員の休息、基本的なメンテナンスなどのために停止する必要があります。
砲塔
砲塔はさまざまな種類に分かれており、乗組員の人間工学などを表現するためのものになっています。
戦争の初期には、多くの国が1人か2人用の砲塔を要する戦車を持っていましたが、ドイツ軍が持っていた利点の1つは、主砲に奉仕することなく残りの乗組員を指揮できる指揮官がいたことでした。
これは、異なる砲塔を持つ事のブレークスルーボーナスによって表されます。
特殊なタイプは固定上部構造です。
主砲は戦車の重量区分にほぼ対応する大きさ(小、中、大、超重)によって区別されます。軽戦車は小型武器などしか運べません。
ただし、上部構造が固定されている場合は別です。上部構造が固定されていると、1サイズ大きい砲を運ぶことができ、軽戦車のシャーシに中型の砲を取り付けることができます。
上部構造が固定されていると、防御にボーナスが追加され、ブレークスルーにペナルティが与えられますが、防衛を目的とした車両にとっては良いオプションです。
サスペンション
サスペンションは、主に信頼性と速度に影響します。
最も基本的なものはBogieサスペンションで、ある程度の信頼性がありますが、Christieサスペンションはかなりのスピードがあります。
Torsion BarサスペンションはBogiesよりも信頼性は高いですが価格も高いです。
後のドイツ戦車に見られるようなインターリーブロードホイールは、いくつかのブレークスルーをもたらしますが、信頼性の問題があります(車輪が重なっているため、側面からの火災に対してある程度の保護と冗長性はあるものの、修理と維持が難しい)。
また軽量シャーシは車輪付きサスペンションやハーフトラックサスペンションを選択できるため車両自体がかなり安くなりますが、信頼性は低下します。
武器
メイン武器はおそらく車両の攻撃的な統計値に最大の影響を与えます。
選択肢はたくさんありますが私たちはすべての武器の種類にそれ自身のニッチさを与えようとしてきました。つまり現実的な欠点と利点があります。
例えば、高速戦車砲(例えばKwK 42やAmerican 76mmのような)は軟攻が劣るものの、貫徹力と硬攻が非常に優れています。一方、榴弾砲は硬攻と貫徹力が劣るものの、軟攻が優れています。
このため例えば初期のドイツ戦車は、かなり重装甲(しかし他の面においては主に一人用砲塔のために苦しむ)を持つフランス戦車に苦戦することを意味します。
完全なリストはスポイラータグに含まれています:
気になる方は元サイトの記事内で確認してください。
ご覧のように今回は巨大なテクノロジーツリーを持たせないように努力しました。
新しいシャーシのテクノロジーツリーは、旧来の装甲のテクノロジーツリーとほぼ同じサイズで、他のモジュールは主にartilleryのタブからアンロックされます。
特殊モジュール
最後に、各シャーシには「特殊モジュール」用のスロットが4つあります。
これには、突破力と防御力にボーナスを与える無線機、T-35のあらゆるニーズに応える副砲、スモークランチャー、追加弾薬庫、湿式弾薬庫などがあります。
傾斜装甲を使用するかどうかの判断はこの領域でも行われます。
おそらく最も興味深いのは、水陸両用戦車大隊(MtG DLC所有者のみ)用の水陸両用戦車として設計を指定できる「水陸両用ドライブ」でしょう。
特定の役割の設計を指定することで確実にそれらがサブユニットで使用されるようになります。
一部の役割には特定の特性が必要です。
たとえば、固定上部構造を使用する対空戦車は使用できません。
しかし、上部構造が固定されたドイツの駆逐戦車、砲塔を備えた米国の駆逐戦車の両方を駆逐戦車部隊に配備することは可能です。
シャーシの重量区分は最終設計の重量区分を決定するため、駆逐戦車として指定された重量シャーシの設計は、重量駆逐戦車として扱われます。
これは、戦争中に役割を変えた車両をより簡単に表現できるということでもあります。
たとえば、StuG IIIに相当する高軟性攻撃砲を搭載した車両を、戦争初期には装甲砲大隊に配備し、その後、砲をより優れた貫通力を持つものに変更して駆逐戦車として活躍させることができます。
設計の簡易化
目的に応じて設計を最適化してほしいので、ある戦車の設計をどこに持っていくかを簡単に決められるようにしています。
例えばイギリスのように、装甲師団で使う高速巡航戦車と、歩兵師団をサポートする低速の歩兵戦車を用意することができます。
そのためにはデザインにシンボルマークのタグを付けます。
師団デザイナーでシンボルのリストから素早く選択し、タグ付けされた装備だけを引っ張ってくるようにすることができます。
タグ付けされていない装備(レンドリースや捕獲された外国の装備、またはタグ付けされていない装備など)は、特定のタグ要件が設定されていない師団でも使用されます。
また、戦車デザインの微調整に時間をかけたくない人のために、どのような自動化機能が必要なのかを改めて検討しました。
もちろん通常の自動設計機能も備えています。これはAIが、使用するデザインを採用し、承認を得るために提供されます。
これにはいくつかの愛情も込められていて、AIが戦車を設計する際には各国の特色が出るようになっています。
また全体的な状況も考慮されているので、戦争中は戦車の装甲が強化されるなどの効果もあります。
さらにオートアップグレード機能も追加され、新しい銃やシャーシなどを研究することで、与えられたデザインを最新の状態に保つことができるようになりました。
過去に作ったデザインをクリックして、ワンクリックで最新の部品にアップグレードすることもできますし(無線機Iが無線機IIになるなど)、チェックボックスをクリックして自動的にアップグレードすることもできます。
自動アップグレードのために経験値(XP)を支払う必要はありませんが、より厚い装甲やより良いエンジンを手に入れることはできません。
それでも自動設計と自動アップグレードの組み合わせにより、プレイヤーが好きなだけシステムを操作できるようになると考えています。
生産ビューで戦車のデザインを視覚的に区別できるように、約1000個の新しい2Dアイコンを追加しました。
これは主に既存の戦車のパーツを新しい方法で組み合わせたものです(タンクAの砲とタンクBの砲塔など)。
歴史的なアイコンはもちろん今でも利用できます。
設計中にアイコンを選択したり、マップ上で車両を表すために使用する3Dアセットを選択することができます。
おわりにー開発陣からの重要なお言葉
今回の特集はここまでです。
私がParadoxに入社した当初、コミュニティと開発者が直接つながっていることは、私にとって大きなプラスでした。
なぜならすべての投稿を3つの異なるマーケティング部門に通すことなく、コミュニティと会話することができるからです。
しかし、このようなコミュニティへの直接アクセスは、私たちにとって大きな代償となりました。
お気づきの方も多いと思いますが、ここ数カ月、あるいは数年、私たちはこのフォーラムにあまり顔を出さなくなりました。
その理由は、参加するのが楽しくないディベート文化に直面することが多く、開発者が怠け者か無能かのどちらかであることが前提とされ、私たちがすることすべてがそのレンズを通して見られるからです。
人生の何ヶ月をも何かを作ることに費やし、作った人たちがそれをずたずたに引き裂いているのを見るだけの状況は、信じられないほどがっかりするだけでなく誰にも何も与えない議論でもあります。
私たちは、有益なフィードバックを見つけるためにページをめくることで報酬を得ているわけではないので、フィードバックが実行されることはありません。
多くの人は、私たちが話していない言語の情報源にアクセスしたり、私たちが知らなかった詳細な情報を調べたりしています。
このようなフィードバックは非常に有用です。例えばほんの数週間前、誰かが古いトルコの本から取ってきた1936年のトルコの鉄道の計画を私に送ってきたので、私はそれを使ってゲームの開始時にトルコの鉄道の設定を更新することができました。
私たちが求めているのは、崇拝されることではありませんし、私たちの判断を批判的な目で見て、議論すらできないような場でもありません。
私たちは皆さんからのフィードバックを求めていますが、お互いに最低限の敬意を払った上で提供できなければ意味がありません。
もしユーザーが、開発者が喜んで皆さんの質問に答えてくれるようなフォーラムを持ちたいと考えるのであれば、私たちが歓迎されていると感じ生産的でプロフェッショナルな方法で意見を交わすことができる場所を作るのがユーザー側の責任です。
私たちが誠意を持って行動していると仮定することは、あなたにとって何の負担にもなりません。
私たちは悪い仕事をするために朝起きて仕事に行くわけではありません。
追加の秘密スポイラー:ここで紹介するのは、私たちがこれを開発している間に、QAが過去数ヶ月にわたって作成した戦車の設計です。
スクリーンショットの番号はいくつかのバージョンが古くなっており、これらのショットで指摘されている問題はその後修正されていることに注意してください。
以上
振り返り感想
文章がぎっしり詰まっており紹介が遅くなってしまいました。
+昨日はくたくたになって帰ってきたので記事を作りきるだけの力が出ず…。
昨晩待っていた方は紹介が遅くなって申し訳ありませんm(_ _)m
今回の日記で最後に出てきた開発陣からのメッセージはとても重要だと思いました。
実際、ParadoxのフォーラムではHoI4はもちろんそれ以外のゲームでも暴言等を非常に多く目にします。
それらを嫌がってHoI4開発陣がフォーラムに登場しないという事のようです。
インターネットやSNSなどが発達し誰でも好きに発言できる世の中になったのは、一部に良い面もあるのでしょうけど、マイナスの面もかなり大きいというのは多くの善良な方々が昨今感じていることではないでしょうか。
HoI4も今はまだ開発者日記が掲載されていますが、別に開発者日記は公開する義務も無く、開発陣がもくもくとゲームの新要素を作ってリリースするだけでもParadox社はやっていけるのだろうと思います。
今回、開発陣より直接苦言を呈される形になりましたが、今後それでもまだ改善されないようであれば、最悪開発者日記の打ち切りということにもなりかねません。
ユーザーは敬意ある対応をしてほしいと思います。
スケールは小さいですが、このサイトも始まった時からコメントを一切受け付けていないのは似たような考えに基づいてです。
本来はHoI4が好きな方と意見交換なども考えていたのですが、安全のためやめておくことにしました。
いつかネットではお互い敬意ある対応をするのが当たり前―
という日が来るまで今後コメント欄を開放することもありませんしサイト用のSNS等もやるつもりはありません。
引き続きこちら側からの一方的な発信にはなりますが自己防衛のためとご理解いただければ幸いですm(_ _)m
正確を期すよう努めていますが詳細はパラドックスサイトの原文をお読みください。